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千雨はプレインズウォーカーになったようです。その4

千雨はプレインズウォーカーになったようです。その4


 放課後の学生というのは忙しい。部活や友達と出かけることなど目白押しだ。
 三十分もしたら教室に人が居るのは稀である。
 千雨もその例に負けず、放課後は、ブログの更新のために、いの一番に帰るのが日課であった。
 彼女のその行動を知るものが居たら、きっとたずねていただろう。
 どうして、教室にいるのと。
 珍しく、彼女は教室にいた。かといって、ずっと残っていたわけではない。
 その証拠に、彼女の服はいつもの学生服ではなく、私服であった。
「長谷川さん。どうしました?
 あ、忘れ物でもしたんですね。長谷川さんはきちっとしているのに、以外と抜けているんですねって言っても聞こえませんよね……」
 そんな彼女に声をかけてくるモノが一名。
 その声は人に聞こえないものであり、いつもの彼女なら無視しただろう。
「忘れ物をしたんじゃなくて、相坂。お前と話に来たんだ」
「あ、忘れ物じゃなくて、私と話しに来てくれたんですか。
 そうですか。え゙?」
 が、今日はその声にこたえる。その瞬間、話しかけてきた相手、相坂さよは固まった。
「み、見えるんですか? 私が」
 震える指で、彼女はふるふると自分を指し、千雨は大きくうなずいた。
「幽霊になって、苦節四十年。やっと私のことを見える人が」
「感動に浸っているところ、悪いんだが、お前は幽霊で会っているのか?」
「あ、はい。正確には自縛霊という奴でして、何十年もこの教室に縛られています」
「自縛霊って……」
 千雨は上から下までさよを眺めた。陽気そうに見えるその姿は、自縛霊というイメージからは程遠い。その辺を歩いているお気楽そうな学生と一緒である。
「本当か? それ?」
「ええ、この中等部からはまったく出られませんから、分類的には間違っていないはずです」
「と言うことは四十年もこんな場所に居るわけだ。
 さっき、やっと私が見える人がって言ってたけど、他に見える奴は本当にいないのか?」
「ええ、本当に私、存在感がうすくて、どんなに高名なお坊さんにも見えないくらいで……」
「なんかそれ、おかしくないか?」
「何がです?」
「だって、誰にも見えないんなら、どうしてお前の名前が名簿に載っているんだ?」
「あれ? そういえばどうしてでしょうね?
 考えたことはありませんでした。
 ああ、でも私の席に座ると背筋が寒くなるって言われていますので、きっとそのせいですよ」
 あははとさよは笑っているが、千雨はちっとも笑うことができなかった。
 きょろきょろと周りを見ては、誰か居ないか確認をしている。
「長谷川さん。そんなことより、別の話をしましょ。
 私、友達通しの話というものに、あこがれていたんです。
 好きな食べ物はなんですか? ああ、テレビの話なんかもいいですね。
 それからそれから」
 人と話せるのが、本当に楽しいのだろう。さよは次々と話題を示してくるが、千雨はそれに答えようとはしなかった。
「相坂、場所をかえるぞ」
 自分の身を守るということが、最優先事項だったからだ。


 場所は変わって校舎裏の雑木林。
 本当は、麻帆良の郊外まで行きたかったのだが、自縛霊という性質上、さよはこの校舎からあまり離れた場所にいけないらしい。そんな拘束条件の中、いろいろ悩んだ挙句に選んだのが、この場所だった。
 うっそうと木々の生い茂るそこは、どこか不気味で何かが出てきそうだ。これから霊と話しますという条件なら、もってこいの場所かもしれない。
「ところで千雨さん。どうしてこんな場所に来たんですか?」
「いや、誰かに見られたらいやだなと思ってな」
 木の壁に隠れるように士ながら、千雨はさよに言葉を返した。
「誰か? ですか?」
「そうだ。
 相坂、知っているんなら教えてほしいんだが、不思議な奴を見たことないか?」
「不思議なですか?
 んー、そう言われてもなかなか思いつきませんね。
 一番不思議な人は千雨さんですし」
 ぐさり。
 擬音化すれば、そんなところだろう。
 言葉という名の刃が千雨に突き刺さった。マンガであったのなら、矢印つきの吹き出しが彼女の身を貫いていたところだ。
 一番不思議なのは、千雨さんですし。
 言葉が頭の中でリピートする。
 分かってはいたが、あえて目を逸らしていた。わたしは普通だと自分に言い聞かせていたが、他人から改めてそう指摘されると物凄く傷つく。
「ああ、どうしました。急にうずくまって
 お腹が痛いんですか?」
「い、いや大丈夫だ。
 私以外に、誰でも良いから頼む」
「なんでそんな、血を吐きそうな荒々しくも切ない声色で。
 というか、足もプルプルと震えてますよ」
 それは、お前の指摘のせいだと言ってやろうと思ったが、とめた。その行動は単なる八つ当たりであることが分かっていたためだ。
「ああ、今思い出しました。
 そういえば、エヴァンシェリンさんって、今年もクラス一緒なんですよね。
 これで、十二年連続です」
「十二年?」
 千雨は眉をひそめた。千雨の年齢は十二歳。今年で十三になる。
 十二年一緒ということは、ゼロ歳から一緒のクラスだということだ。
「エヴァンシェリンさん、実は十二年も中学生をやっているんです」
 千雨の視線に込められた意味を正しく理解して、さよは補足する。
「その間、マグダウェルは成長したりとかは?」
「してませんね。覚えている限り、ずっとあの姿のままですよ」
 あいつもプレインズウォーカーだったりするのか?
 頭の中に疑惑が浮かぶが、ならばなぜ中学生という役割をこなし続けているのだろうか?
「マグダウェルの友人はそれを疑問に思ったりとかは?」
「さあ? みなさん中等部を卒業してから校舎に来ませんからね。
 それ以前にエヴァンシェリンさんが人と話している姿を見たことがありません。
 例外としては、高畑君くらいでしょうか?」
「高畑君って、高畑先生のことか?」
「ああ、すみまえん。同級生だったときの癖で。昔、中等部が男女共学だったときに一緒のクラスだったんですよ。
 誰とも話さないエヴァンシェリンさんも高畑君だけは別でして、一時期噂になったほどですよ。
 付き合っているんじゃないかって。
 今も、屋上で話している姿をたまに見かけますからね」
 千雨は頭の中の危険人物名簿に二人の名前を付け加えた。
「ところで……」
「ああ、なんだ?」
しばし千雨は思考にふけっていたが、さよに呼びかけられ、意識を目の前にもどした。
「千雨さんってなんですか?
 もしかして、すごい霊能力者だったりします?」
「いや、私はなんというか……
 その、魔法使いだ」
「ああ、千雨さんも魔法生徒の方だったんですか」
「魔法生徒?」
「ええ、あんまりよく知らないんですけど、魔法使いの生徒の人です。
 去年まで一緒のクラスだった高音さんもそうでした。
 あ、でも、それを聞くって事は、千雨さんは違うんですね」
「わたしはもぐりみたいなもんだ。だから、あまりここの魔法使い達に知られたくなくてな。
 頼むよ、わたしのことは誰にも言わないでくれ」
「ああ、なる程。冬木市の衛宮さんみたいな感じですか」
「おい、ちょっと待て。例えとしては合ってるが、どうして霊で未成年のお前がFate/stay nightなんて知ってる?」
「私、読書が趣味で、コンビニで立ち読みをしている人の後ろから読ませてもらってるんですよ。
 ところで、どうして未成年だと知らないんですか?」
「それは、ええと……」
 千雨は言葉に詰まった。
(言えねえ。原作は十八禁ゲームだと)
「と、ともかくちゃんと黙っておいてくれよな。
 あと、教室では、話しかけないでくれ、誰が見ているか分からないし。
 時々、こういう感じでなら話し相手になるからさ」
 結局、千雨がしたのは、言葉の勢いでごまかすということだった。もっとも、それは効果覿面だったらしい。
「ほ、本当ですか?」とキラキラそた瞳でさよが千雨を見つめている。
 その純粋かつ幸せそうな瞳に、自分が酷く汚れて見え、心に何かがズシリと突き刺さった。
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  1. 2012/01/03(火) 13:46:52|
  2. 千雨はプレインズウォーカーになったようです。
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  4. | コメント:5
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コメント

久し振りの更新キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
  1. 2012/01/05(木) 20:46:39 |
  2. URL |
  3. マソモス #-
  4. [ 編集]

久々の更新だいやっほーい!
  1. 2012/01/08(日) 06:24:30 |
  2. URL |
  3. 通りすがり #XcwygEl.
  4. [ 編集]

久しぶりの更新も楽しく読ませていただきました。
健介君も含めて今後のご活躍を期待しております。

>幽霊になって、苦節四十年
原作では60年ですが、アニメ二期では40年らしいので単純に勘違いなのかそれとも意図的なのか?多分大して気にする点でもないような気もするのですが。

>冬木市の衛宮さんみたいな感じ
一瞬fateのクロスも有るのかと思ってしまいましたw
多分fateの漫画ってエースとか電撃とかだと思うんですがコンビニによってはギリギリ置いてありますね。
  1. 2012/01/10(火) 20:47:50 |
  2. URL |
  3. black #lmFDMD.2
  4. [ 編集]

更新乙です
楽しく読ませてもらってます
あと健介くんは一般生徒ですも更新待ってます
  1. 2012/01/19(木) 20:42:49 |
  2. URL |
  3. #-
  4. [ 編集]

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このコメントは管理者の承認待ちです
  1. 2012/02/21(火) 06:34:50 |
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