砂上工場

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千雨はプレインズウォーカーになったようです。その3

千雨はプレインズウォーカーになったようです。その3

 入学式は問題なく終了した。
 あえて、他の麻帆良市街の学校と千雨の入った中等部とで違ったところといえば、学園長がそこに居たことだろうか。
 麻帆良市街には知っての通り、数多の学校がある。しかし、その頂点にたつ学園町は一人だけだ。
 入学式などの各イベントが重なったときは、学園長はどこか一つの学校にしか出席できない。
 今回はたまたま、中等部に順番が回ってきたということか。
 普通、組織の長の話とは長ったらしいものだが、この学園長はそうでもないようだ。中身のある話をすっきりとした尺で話してくれ、うんざりはしなかった。それよりも新田という生活指導の先生の方が、これからの中学生活に対する心得なんていう堅苦しい話をしていたため、疲れた程だった。
 ともかく、先生方の話を聞き終えると、体育館から自分達の教室へと移動するのだが、教室に入りクラスメート達をじっくりと観察できるようになったとたん、千雨は頭を抱えたくなった。
 留学生が多いのは、まあよしとしよう。指導する側としては、彼女達を集めたほうが、指導もしやすいことだろう。そのクラスにここが選ばれたと考えればすっきりする。担任もハーフっぽいからそのことが考慮されたのだろう。
 そう、そこまではいい。
 千雨は左前方にある席へと目を見やった。
 そこは空席のままで、誰か人間が座る様子は確認できない。人間は……
 よくよく見れば、薄透明色の影がそこには居る。みんなが真新しいブレザーの制服を着ているにもかかわらず、その影だけはセラーの制服を着ていた。普通、体が透き通っている人間など居ない。あえているとすれば、それは幽霊だ。
 ……万歩譲って、幽霊が居るのはいいとしても、どうしてその幽霊の名前が出席名簿に載っているのだろうか?
 他の人には見えなくても千雨には見えていた。
 相坂さよと呼ばれた瞬間に、返事をしながら手を上げて、必死にアピールしているその姿が。
 担任の高畑に気づいてもらえず、肩を落としているところまでばっちりだ。
 貧血でふらりとしかけたが、何とか気合で乗り切った。初日から悪目立ちはしたくない。
 他にもこのクラスにはおかしいところがある。彼女はちらりと後ろの席を見た。
「なにか?」
「いや」
 視線に気づき、ピクリとも表情を変えず、彼女に声をかけられるが、なんでもないとすぐに視線をそらした。
 なあ、どうしてみんな気づかないんだ?
 絶対におかしいだろ?
 後ろに座っている奴、どう見てもロボットじゃねえか!
 認識阻害がかかっていたとしても、彼女がちゃんと人間に見えているのは酷すぎるぞ。
 彼女の耳には次のようなクラスメートのおしゃべりが届いていた。
「ねえ、あの子。緑色なんて不思議な髪の色してるね。
 染めてるのかな」
 染めるも何も、もとからあの髪の色は天然じゃねぇだろ。どう見ても人工物だ。
「あの耳飾、ウサギみたいでかわいいです」
 確かに、件のロボットの両耳にあたる部分からは天に向かって白いものがついていた。
 しかし、どう見たら、あれがウサギの耳に見えるのか。どう見てもあの突起は金属だろうが。ふわふわの毛で包まれたウサギの耳とは断じて違う。
 もろん千雨からは、そんな突っ込みは一言も言わない。
 言ったらむしろ、差別は良くないと槍玉にあげられるのは、経験上理解しているからだ。
 ストレスで胃に穴が開く前に、早く終わることを切に彼女は祈った。
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  1. 2011/03/20(日) 11:13:35|
  2. 千雨はプレインズウォーカーになったようです。
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千雨はプレインズウォーカーになったようです。その2

とりあえず、続きがかけたので短いですけど、のせておきます。

千雨はプレインズォーカーになったようです。その2

平穏とはすばらしい。
千雨は麻帆良行きの電車に揺られながらそんなことを考えた。
思えば、この春休みは散々だった。
異世界転移なんておかしなことを体験し、そこで出会った男に魔法なんて非常識な技術を7つも学ばされたのだ。
だが、そんな世界も昨日でおさらばだ。中等部への入学という区切りで幕を下ろした。正確に中等部への入学は明日からだが。
今日は寮への引越しである。
とは言っても荷物の大半はすでに運び込まれている。自分の手で持っていくものは手荷物くらいだ。
彼女は手提げの中からノートパソコンを取り出した。薄さと軽さを売りにした今春発売の最新機種であるそれは、入学祝に両親がくれたものである。
今しがた思いついたブログの内容を打ち込もうと、キーボードへ手を添える。そして、人差し指を軽く上げるのだが、そこで彼女の動きは止まった。
別に何が起きたというわけではない。あえて言うならば、電車が麻帆良の市街地へと入ったくらいだ。
……表面上は。
プレインズウォーカーとなった時に目覚めた感覚が千雨にアラートを発する。ここは、誰かのテリトリー内だ。気をつけろと。
彼女はゆっくりと、不自然にならないように気をつけながら電車の外へと目を向けた。
上空にはいつもどおりの空が広がっているはず。期待を込めて見上げたそこは、薄緑色の膜に覆われていた。
それが何なのか、千雨にはすぐに分かった。実際に見るのは初めてだが、すぐに理解する。
結界。
男に詰め込まれた知識と照らし合わせて、彼女はそう判断する。
誰が? 何のために?
疑問が頭に浮かんでくるが、まずは結界の効果のほうが重要だ。
結界の中には、内部の人間を衰弱死させるものもあると聞く。
体になんらだるさを感じないところを見るとそういう類のものではないようだが、油断は禁物だ。
彼女は結界の術式を読み解こうと目を凝らす。残念ながらその魔法の構成は彼女の知るものとは違っていた。
しかし、プレインズウォーカーにとって、構成の違いなど些細なことだ。千雨達の目は術式に関係なく、その本質をつかむことができる。
麻帆良を覆う結界は様々な効果を持て居るらしい。
その中でも多くのリソースを割かれているのは認識阻害か?
そのことが千雨の中に長年渦巻いていた疑問をすとんと解消する。
何を言っているのか分からない。
千雨はその目を思い出す。
困惑する目、馬鹿にし蔑む目、おかしな人間を見る目。
そのトラウマを思い出す。
ちくしょう。そういうことかよ。
彼女は理解した。あんな目で見られていた理由を理解した。
彼らが、そんな目をしていたのは当然のことだった。
彼らは別段特別に大らかで何も考えていないという訳ではない。普通の感性を持っていた人間だったのだ。
そう、普通の人間が魔法で無理やり、疑問を持たない、なんでも許容してしまう人間にされていただけなのだ。
そして、この結果を張ったのは……
怪しいと思われる人物をピックアップする。
異常な身体能力を持つ広域指導員。
異質な技術力を持つ工学部。
そして、後は……
人ではないが、常軌を逸した大きさを誇る世界樹だ。
異世界には、歩き回る植物、ツリーフォークなる生物も居るらしい。
あの世界樹が思考を持ついう可能性も捨てきれない。
自分の世界に魔法がないなんて言ったことを今更ながらに間違いだったことに気づく。
彼女の知らないだけで、こんなにも近くに魔法は存在していたのだ。
そのことに気づいた自分はどうするべきか?
千雨は考える。考えるが答えは何もなかった。
いや、分かりにくいので言い直そう。何もないという答えが出たのだ。
別にこの結界を張ったものと対立しているわけではない。そいつに恨み言のひとつでも言いたい気持ちはあるが、ただそれだけだ。
自分に害のない限り、放置することに決める。
ただ、今からでも遅くないから、学校を変わることができないかと思った。
  1. 2011/03/05(土) 13:05:43|
  2. 千雨はプレインズウォーカーになったようです。
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